ファクタリングの動向

ファクタリング業の背景

ファクタリングとは、企業などから売掛債権を買い取る売掛債権買取業務のことを指し、入金期日前に売掛債権を第三者に譲渡し、売掛債権を早期に現金化する資金調達方法です。売掛債権を総合的に管理や回収などを行う金融サービスともいえます。 売掛債権を締められた時点で財産とみなし、流動性資産を早く資金化することで資金調達が可能となるため、中小企業の資金調達の新しい受け皿となっています。

三者間ファクタリングの典型的な例

日本での三者間で行うファクタリングの典型的な例は、診療報酬債権の売買(レセプト)です。 私たちが医療機関で診療を受けると一般で3割、70才以上は2割、75才以上は1割を自己負担分として会計で現金で支払います。残りの7〜9割は国民健康保険や社会保険などから2ヶ月後に医療機関へ支払われます。 医療費は、2019年時点で約43兆円の市場規模となっています。 その内訳は、日本の人口の約30%が70才以上であるため、会計窓口経由で受け取る(現金入金)よりも国保や社保からの後日入金(診療報酬債権による入金)が多くなります。 入金日が後ろ倒しになると、資金不足におちいることから、多くの医療機関がファクタリングを利用して資金調達を行っています。 よって、国保や社保を交えた3社間ファクタリングとなります。

赤字会社と廃業数

日本の事業者数はおよそ359万社 小規模事業者358万社、大企業1万1千社 (中小企業庁HPより) そのうち70%にあたる180万社の会社(法人)が赤字会社 (国税庁より) 1年間で起業する企業数は12万社 創業後の廃業率は、1年間で20%、3年で37%、10年で64% 個人事業主の廃業率は、創業後1年間で40%、3年で62%、10年で88% (出典:中小企業白書「事業の存続・倒産と再生」) 2019年の廃業数は、約4万3,000社 (東京商工リサーチHPより)

一般企業の資金調達法(2006年)

会社を経営していると、支払期日が数ヶ月先に設定されることなどによる資金不足を補うべく、資金調達が必要となるケースが多々あります。資金調達には次のような手段があります。 1.銀行融資 年利2.125%と利息は安いが決算書や事業計画書のチェックなど審査が厳しく、担保(動産、不動産、保証人)などが求められる。 2.事業者ローン 貸金登録をしている貸金業者(ノンバンク・金融屋・町金)。 2006年当時 年利〜29.2%  2021年 現在~20%ほどで調達が可能。 手形小切手担保、保証人担保、不動産担保、動産担保融資、手形割引などがある。銀行に比べると審査が通りやすい。 ※参考:2007年 貸金業者の貸付残高23.3兆円 3.親族、知人からの借入、その他 これまでは、上記のような資金調達方法が一般的であり、特に「事業者ローン」が多くの中小企業の受け皿となっていました。

小切手や約束手形による資金調達は減少傾向

メインバンクに信用が生じると当座預金口座を開設でき、小切手の振出が可能となります。

 

小切手

 

約束手形

先付け日付での振出が可能です。支払い期日を先に延ばせるため、キャシュフローが改善する猶予が生まれます。

 

しかし、いずれの方法も決済期限に資金が用意できないと不渡りとなり、2回不渡りとなった場合、銀行取引停止となります。

 

手形の交換高は、平成1990年が4,797兆円であったのに対し、平成2018年は261兆円と減少傾向にあります。

 

手形割引

手形割引は、割引業社が振出人・割引人(裏書人)の信用度を調べ審査し、割引額を引いた金額を割引人に支払います。

 

 

手形小切手担保融資なども使われていましたが、平成18年の貸金業法改正(平成22年完全施行)により貸金業者が減少し続けています。

 

貸金業の推移

かつては、約束手形(後日資金化)の流通が日本経済を支えてきた時代もありました。

「これまでの日本経済の発展と企業間決済で大きな役割を果たしてきた」(経済産業大臣)

資金調達先であった貸金業者が次々と廃業し、融資が受けられなくなったことで、手形割引もなくなり、手形の流通自体が減少。中小企業様の資金調達が難しくなっています。

政府は大企業と中小・小規模事業者の取引適正化を目的に、2026年に親事業者から下請け事業者への約束手形を利用した支払いを廃止する方針が打ち出されています。(経済産業省HPより)

経済産業省が流動性資産を早期資金化する資金調達を推進

大手企業は手形の支払いからグループ会社でファクタリングに移行 例:日立キャピタル、三菱UFJキャピタル 全国銀行協会は、株式会社全銀電子債権ネットワーク(電債)を立ち上げ、売掛金を早期資金化できるシステムを構築。 上記には当てはまらない中小企業様向けの資金調達手段として ・売掛債権等売買契約 ・集金代行業務契約 が資金調達の新しい受け皿になっています。 最近、ファクタリングにおいて注目したいことに「将来債権」の譲渡があります。 原則、ファクタリングで譲渡ができるのは「確定債権」のみでしたが、2020年4月の改正民法により、将来債権の譲渡について明文化されました。今後、将来債権を扱うファクタリングが増えることが予想されます。 (法務省民事局HPより)

参考:債権の種類

将来債権将来発生が予定されている債券
確定債権受注した仕事やサービスや商品を提供後に発生する請求書などと呼ばれる債権
不良債権納品やサービスの提供が完了し、請求日を超過しても支払いが行われていない債権。経営悪化などの理由で回収できない、回収の可能性が困難になった債権

ただし、以下については貸金業にあたるため禁止されています。 ・法律で譲渡禁止の権利を買い取る。 ・遡求権(償還請求権)を主張し支払いを迫る。 ・買戻し特約を付ける。もしくは買戻し請求をする。